はじめに

DAWを使わずにハードウェアだけで音楽を作る「DAWレス」スタイル。楽しい反面、複数のMIDI機器を接続すると「どの機材がどのCHで通信しているか」が見えにくくなります。

この記事では、筆者が実際に使っている4台のセットアップを、MIDIルーティング、CH割り当て、クロック同期、オーディオ接続まで含めて公開します。ミキサーもPCも使わない、ハードウェアだけで完結する構成です。


機材一覧

#機材役割
1Elektron Syntaktマスターシーケンサー&ドラムマシン
2Elektron Analog Four (A4)アナログシンセ(コード担当)
3Behringer TD-3アシッドベースライン
4Roland SP-404mk2サンプラー&エフェクト

MIDIルーティングの全体像

Syntakt をマスターとしています

SyntaktはMIDIトラック機能で外部の2台(TD-3とA4)にノートを送りながら、SP-404mk2にはクロックのみ送ってBPM同期しています。

接続図

DIN MIDIケーブルのデイジーチェーンで接続しています。A4が中継地点になっており、THRUとOUTを使い分けているのがポイントです。

Syntakt MIDI OUT ──→ A4 MIDI IN
                      │
                      ├─ A4 MIDI THRU ──→ TD-3 MIDI IN
                      │   (Syntaktの信号をそのまま転送)
                      │
                      └─ A4 MIDI OUT ──→ SP-404mk2 MIDI IN
                          (クロック同期のみ)
  • A4 MIDI THRU: Syntaktから受けた信号をそのままTD-3に転送します。SyntaktのMIDIトラックからのTD-3向けベースラインは、このTHRU経由で届きます
  • A4 MIDI OUT: A4自身が生成する信号を送信します。この構成ではSP-404mk2へのクロック転送に使っています

Syntaktには最大12トラックあり、オーディオトラックとMIDIトラックを自由に切り替えられます。一部のトラックをMIDIトラックに設定することで、TD-3のベースラインとA4のコードパートをSyntaktのシーケンサーから送信でき、Syntaktの画面だけで全体のアレンジを組み立てられます。


Syntakt MIDI OUT のCH割り当て

この構成では、SyntaktのMIDIトラックの送信先CHの設定がキモとなります。Syntaktが外部機器へノートを送る側なので、この設定で全体のルーティングが決まります。

実際のSyntakt側の設定

SyntaktのMIDIトラック送信先CH送信先機材送る内容
トラック81TD-3ベースラインのシーケンス
トラック72A4コード進行のシーケンス

受信側の設定

機材受信CH備考
TD-31本体側で固定。Syntakt側をこれに合わせる
A42ポリモードを設定したトラック1の受信チャンネルを指定
SP-404mk2ノート受信なし(クロック同期のみ)

ポイント: TD-3はMIDI CHが本体側で固定されているため、Syntakt側のMIDIトラック送信CHをTD-3に合わせる必要があります。逆にA4は受信CHを自由に設定できるので、Syntakt側の都合に合わせられます。


クロック同期の設定

クロック(テンポ情報)もSyntaktから全機材に送っています。SyntaktのMIDI OUTからDIN MIDIケーブル経由で送信されます。

機材クロック役割設定
SyntaktマスターClock Send: ON
A4スレーブClock Receive: ON
TD-3スレーブClock Receive: ON
SP-404mk2スレーブSync: External

Syntaktのシーケンサーでスタート/ストップすると、全機材が連動して再生・停止します。SP-404mk2では受信したクロックがサンプルのBPMやディレイタイムに影響します。


接続でハマったポイント

TD-3のCH固定に注意

TD-3はMIDI CHが本体側でCH 1に固定されています。Syntakt側のMIDIトラックの送信CHをこれに合わせる必要があり、逆はできません。CH割り当てを決める際はTD-3の制約を起点にすると良いです。

TD-3のクロック設定が見えない

TD-3のMIDIクロック受信ON/OFFは、電源OFF→ON時のボタン操作で切り替えるタイプです。画面やメニューで現在の設定を確認できないため、「今クロックを受け取っている状態なのか」がわかりにくいです。

Syntaktからクロックを送っているのにTD-3が同期しない場合、まずこの設定を疑ってください。電源を入れ直してボタン操作をやり直すのが確実です。

A4でスタート/ストップが効かない

Syntaktのシーケンサーをスタート/ストップしてもA4が連動しない場合があります。原因はA4側の PROGRAM CH受信(Program Change Receive)がOFFになっている ことでした。

A4でクロックだけでなくトランスポート(スタート/ストップ)も受け取るには、この設定をONにする必要があります。

クロックのマスターは必ず1台に

スレーブ側の機材でClock Sendが有効になっていると、クロックが二重に流れて同期がずれることがあります。スレーブ側は全台Clock Send: OFFに設定してください。

その他の気づき

  • MIDIトラックのCH確認: SyntaktのMIDIトラックで外部機器を制御する場合、送信先CHと対象機器の受信CHが一致していることを必ず確認

オーディオルーティング

このセットアップではミキサーを使わず、オーディオもデイジーチェーンで完結しています。

TD-3 Audio OUT ──→ A4 Audio IN
                    A4 Audio OUT ──→ Syntakt Audio IN
                                     Syntakt Audio OUT ──→ SP-404mk2 Audio IN
                                                           SP-404mk2 OUT ──→ スピーカー / ヘッドホン

各機材の音声が順番に合流していき、最終段のSP-404mk2からマスターアウトを出しています。最終段のSP-404mk2で全体にエフェクトをかけたり、パッドでサンプルを重ねたりできるのがこの構成のメリットです。


おまけ: ブラウザでMIDI信号をモニタリングする

MIDIの動作確認に、当サイトのブラウザツールが使えます。各機材をUSBでPCにつなぎ、Chrome上でMIDI信号をリアルタイムに確認できます。

  1. MIDI接続チェッカーを開く
  2. 「MIDIアクセスを許可」を押す
  3. 各機材のノブを回したり鍵盤を叩いて、イベントログでCH番号を確認
  4. チャンネルインジケーター(1-16)で、どのCHがアクティブかを一目で確認

BPMの同期確認には、BPMタップテンポを利用して、手でタップした値と機材の設定BPMを比較する方法もあります。


まとめ

DAWレス環境でのMIDI接続は、一度設定を整理すれば安定して動きます。大事なのは以下の3つです。

  1. Syntakt MIDIトラックの送信CHを正しく設定する: 受信側のCHと一致させる(特にTD-3はCH固定なので注意)
  2. クロックのマスターを1台に絞る: スレーブ側のClock SendはOFFに
  3. 接続に迷ったらモニタリングで確認: ブラウザのツールでCHやクロックを可視化すると原因特定が早い

次の記事では、当サイトのMIDI接続チェッカーを使って、このセットアップのMIDI信号を実際にモニタリングする方法を紹介します。