「確認するだけなのにDAWを起動するのが面倒」
4台の機材をMIDIで接続したDAWレス環境を組んでいると、こんな場面がよく起きる。
セットアップを変えた後、「Syntaktのシーケンサーを走らせたらTD-3が反応しない」「SP-404mk2がクロックに同期していない気がする」という状況だ。
以前はこういうときAbleton Liveを立ち上げていた。ドライバーのロード、プロジェクトの読み込み、MIDIの設定画面を開く——起動からトラブル確認まで2〜3分はかかる。「ちょっと確認したいだけ」なのに、この手間がストレスだった。
Web MIDI APIを使うようになってから、この確認作業がブラウザを開くだけで完結するようになった。
Web MIDI APIとは
Web MIDI APIは、ブラウザからMIDI機器と直接通信できるJavaScriptのAPIだ。2015年にGoogle Chromeが実装して以来、ChromeとEdgeで動作する。
仕組みとしては、OSのMIDIドライバー経由でブラウザがMIDI機器にアクセスし、JavaScriptコードから信号の送受信ができる。専用アプリやプラグインのインストールは不要で、URLを開いてアクセス許可を押すだけで使い始められる。
対応ブラウザ(2026年現在)
| ブラウザ | 対応 |
|---|---|
| Google Chrome | ✓ 対応 |
| Microsoft Edge | ✓ 対応 |
| Opera | ✓ 対応 |
| Safari | ✗ 非対応 |
| Firefox | ✗ 非対応 |
MacユーザーはSafariをメインにしている場合が多いが、MIDI確認のためだけにChromeをインストールする価値は十分ある。
何ができるのか
Web MIDI APIで実現できることは主に3つだ。
1. 接続デバイスの一覧表示
USB接続されたMIDI機器を名前付きで表示できる。「Elektron Syntakt」「Behringer TD-3」のように機器名が表示されるため、PCがちゃんと認識しているかをすぐ確認できる。
機器が表示されない場合はUSBドライバーの問題や接続不良を疑える。DAWで「MIDIデバイスが見つからない」というエラーが出る前に、この段階で確認できる。
2. リアルタイムMIDI信号の監視
鍵盤を押す、ノブを回す、パッドを叩く——これらの操作がどのチャンネルで、どんなMIDIメッセージとして送信されているかをリアルタイムで表示できる。
具体的には以下のような情報が取れる。
- NoteOn / NoteOff: ノート番号とベロシティ
- CC(コントロールチェンジ): CC番号と値(0〜127)
- PC(プログラムチェンジ): プログラム番号
- ピッチベンド: ベンド量
- MIDIクロック: 受信クロックからBPMを自動計算
3. MIDIクロックのBPM確認
MIDI機器間のテンポ同期はMIDIクロック信号で行われる。Web MIDI APIでこのクロック信号を受け取り、BPMに換算できる。
筆者の場合、Syntaktをマスタークロックとして走らせたとき、他の機材に正しくクロックが届いているかを確認するために使っている。
DAWレス環境での実用例
筆者は Syntakt → A4 → TD-3 / SP-404mk2 というMIDIルーティングで4台の機材を接続している。この構成でよく使うシーンを3つ紹介する。
シーン1: TD-3が鳴らないときのCH確認
Syntaktのシーケンサーからノートを送ってもTD-3が反応しないとき、まずチェックするのがMIDIチャンネルだ。
MIDI接続チェッカーのイベントログを見ながらSyntaktのシーケンサーを走らせると、「CH01でNoteOnが流れている」か「CH10で流れている」かが一目でわかる。TD-3はCH 1固定なので、Syntakt側がCH 1で送信しているかをこれで確認する。
チャンネルの設定ミスはセットアップを変えたときに起きやすく、以前はこの確認のためだけにDAWを立ち上げていた。
シーン2: クロック同期の確認
SyntaktのシーケンサーをスタートしてもSP-404mk2がテンポに合わない場合、MIDIクロックが届いているかを確認する。
チェッカーのBPM表示欄でSyntaktのBPMと一致した数値が出ていれば、クロックは正しく届いている。もし表示が出なかったり、値が大きくズレていれば、接続の問題またはスレーブ側のClock Send設定がONになっていることを疑える。
シーン3: 新しい機材を追加したときの動作確認
新しい機器をセットアップに組み込んだとき、最初にやることがMIDI接続チェッカーでの確認だ。
機器がリストに表示されているか、鍵盤を叩いてNoteOnが届いているか、どのチャンネルで通信しているか——この3点をブラウザで確認してからDAWを使うフローにしている。事前にここで確認しておくと、DAW側で「MIDIが届かない」という状況になったときの切り分けが格段に速くなる。
なぜDAWより速いのか
DAWでMIDI信号を確認しようとすると、プロジェクトを開いてMIDI入力のモニタリングをONにしてトラックを選択して……という手順が必要だ。使い慣れたDAWでも30秒〜1分はかかる。
ブラウザベースのツールは、URLを開いてアクセス許可を押すだけ。ページを開いた瞬間からMIDI信号が見える。DAWの起動を待つ必要がない。
「この接続、合ってるかな?」という10秒の疑問を、10秒で解決できる。
まとめ
Web MIDI APIが登場したことで、MIDI機器の接続確認に「DAWを起動する」という手順が不要になった。
当サイトのMIDI接続チェッカーはWeb MIDI APIで動いており、接続デバイスの一覧表示・リアルタイム信号監視・クロックBPM表示までブラウザだけで完結する。DAWレスユーザーにもDAWユーザーにも、「ちょっとだけ確認したい」場面で役立てばと思う。