きっかけ:「この曲に合わせて鳴らしたい」
中古レコードを掘っていると、「このブレイクに合わせてSyntaktを走らせたい」「このグルーヴにSP-404mk2のループを乗せたい」と思う場面が頻繁にある。
問題はBPMだ。ストリーミングの曲ならBPM情報が取れるツールもあるが、中古レコードや古いカセットの音源にはそんな情報はない。DAWに読み込んでグリッドを合わせれば測れるが、「ちょっと合わせて鳴らしてみたいだけ」の場面でDAWを起動するのは大げさすぎる。
そこで使っているのがタップテンポによるBPM計測だ。
タップテンポの仕組み
原理はシンプルで、タップした間隔(ミリ秒)から計算する。
BPM = 60,000 ÷ タップ間隔(ms)
たとえばタップ間隔が500msなら 60,000 ÷ 500 = 120 BPM。
ただし、人間の手叩きは毎回わずかにズレる。1回の間隔だけで計算すると誤差が出やすいので、複数回の平均を取るのが現実的だ。4拍平均でも大まかなBPMはわかるが、8拍以上タップして平均を取ると小数点レベルで安定してくる。
当サイトのBPMタップテンポは4拍・8拍の切り替えができる。はじめは4拍で大まかに確認し、Syntaktに入力する前に8拍で精度を上げるというフローが個人的なやり方だ。
SP-404mk2のディレイ設定に使う
タップテンポの実用場面で個人的に一番多いのが、SP-404mk2のディレイタイム設定だ。
SP-404mk2のディレイエフェクトはタイムをms単位で指定する。「BPM130の曲に合わせたエコーをかけたい」と思ったとき、何msを入力すればいいかがわからないと困る。
計算式は以下の通り。
1拍のms = 60,000 ÷ BPM
例: BPM 130の場合
1/4(四分音符) = 60,000 ÷ 130 ≈ 461ms
1/8(八分音符) = 461 ÷ 2 ≈ 231ms
付点1/8 = 231 × 1.5 ≈ 346ms
付点八分のディレイは、U2「Where The Streets Have No Name」のギターエフェクトや、現代のダンスミュージックでも頻繁に使われる定番の設定だ。BPMに合った付点八分を入力すると、ループと音像が自然にはまる感覚がある。
BPMタップテンポではBPMを入力すると1/4・1/8・1/16・付点1/8・三連符のディレイタイムをすべて自動計算してくれる。この数値をそのままSP-404mk2に入力できるので、耳で確認しながらすぐ設定できる。
Syntaktへの入力手順
レコードのBPMが取れたら、Syntaktに入力してシーケンサーを走らせる。
- BPMタップテンポで8拍以上タップしてBPMを確認
- Syntaktのテンポをその値に設定
- レコードを再生しながらSyntaktをスタートして耳で確認
- ズレていれば0.1単位で微調整
完全にピッタリ合うことはまれで、実際にはレコードのほうがBPMが揺れている(特にアナログ盤)。Syntaktのシーケンサーをまず合わせてから、実際の音を聴いて「129.8か130.2か」を耳で決める。
このときMIDIクロックで同期している機材(筆者の場合はA4とSP-404mk2)は、Syntaktのテンポ変更に連動して自動的に追従する。クロック同期のメリットはここにある。
BPMによるジャンルの傾向
計測したBPMがどのあたりのジャンルに対応するかを知っておくと、「このレコードはこういうテンポ感なんだ」という理解が深まる。
| BPM帯 | 主なジャンル |
|---|---|
| 70〜90 | ヒップホップ、ダウンテンポ、レゲエ |
| 90〜110 | R&B、ソウル、ファンク |
| 110〜130 | ポップス、ハウス(スロー) |
| 128〜135 | ディープハウス、テクノ |
| 138〜145 | トランス、ユーロビート |
| 160〜180 | ドラムンベース、ジャングル |
同じ90BPMでもヒップホップとファンクでは体感テンポが違う。ハーフタイムかダブルタイムかで「体感BPM」が変わるためで、計測値はあくまで起点として使うのがいい。
クロック同期との使い分け
当サイトのMIDI接続チェッカーには、接続機器からMIDIクロックを受け取ってBPMをリアルタイム表示する機能がある。
使い分けはシンプルだ。
- BPMタップテンポ: BPMがわからない音源(レコード、ストリーミング等)を計測するとき
- MIDIチェッカーのBPM表示: 自分の機材のクロックが正しく設定されているか確認するとき
レコードに合わせてジャムするときは前者で計測し、Syntaktに入力した後は後者で「Syntaktのクロックがちゃんと他の機材に届いているか」を確認する、というフローで使い分けている。
まとめ
BPM計測のポイントをまとめる。
- 8拍以上タップして平均を取る: 4拍だと手のブレが出やすい。8拍以上で精度が安定する
- ディレイ設定にそのまま使える: ms単位の計算をツールに任せれば、エフェクター設定まで直結できる
- Syntaktへ入力後は耳で微調整: アナログ音源はBPMが揺れているので、最後は必ず耳で確認
BPMタップテンポはスペースキーで操作できるので、再生しながら片手でタップして片手で機材を操作する、という使い方がしやすい。